穂村弘『君がいない夜のごはん』
お前の腰を破壊するためだ
というわけで今回は、穂村弘『君がいない夜のごはん』(NHK出版)です。
本作は歌人穂村弘が『食』をテーマにしたエッセイを一冊にまとめたものです。
穂村弘といえば、ひたすらに冴えない男性目線のエッセイを書く人、という印象ですが、今回もその鈍くささはいかんなく発揮されています。
個人的な所感ですが、エッセイはいかに読者を共感させるか、というところが肝要であるように思えるので(そういう意味では昨今のJPOPの歌詞はエッセイに近いものなのかもしれません)、こういうエッセイはもっと増えてもいいように思うんですよね。
穂村弘の場合、そういう鈍くささの中に、世界を見つめる鋭い観察力があって、それがただの共感させるだけのエッセイにとどまらないところなのかなあ、と思います。
最初に『食』をテーマにした、と書いてしまいましたが、正確には、『食』から見る日常生活、といった部分がテーマの大半で、四方田犬彦や石井好子のようなタイプのエッセイを期待して読むと、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。麦茶だと思って飲んだらめんつゆだった、的な。
とはいえ、いつも通り素敵なエッセイに仕上がっていると思います。特に食堂車の話は大好きでした。