原田マハ『楽園のカンヴァス』
そこには確かな情熱があるんです。
というわけで今回は、原田マハ『楽園のカンヴァス』(新潮文庫)です。
本書は再読作品になります。多分三回目くらいかな。
この記事には文庫版のAmazonページを貼っていますが、僕が持っているのはハードカバー版です。初見の作家(僕の原田マハデビューは本作でした)でいきなりハードカバーを買うことはまずないのですが、当時話題になったこともあって発売からあまり間をおかずに買い、間もなく読了した記憶があります。
今回本作を再読したのは、ちょうど『暗幕のゲルニカ』(新潮社)を購入したため、同作者の美術をテーマにしたこちらも再読しておこう、と思った次第。
それでは感想。
いいですね、これ。すごく好みです。
作者が元々美術畑の人間なだけあって、ルソーやピカソの作品について語る部分は臨場感があります。
本作はMoMAのアシスタントキュレーターであるティムとルソー研究の気鋭早川織絵がルソー幻の作品とされる絵画の真贋をめぐって対決する、というのがメインの話になるのですが、ここが濃密で非常によかったと思います。
この対決の締めくくりはやや駆け足になった印象がありますが、物語のエンディングは非常に読後感がいいのであまり気になりません。
この対決パートには『夢を見た』という作中作が登場するのですが、個人的にはこれを利用して、もう少しミステリのような読ませ方をさせても面白かったのかな、と思いました。全体的にうっすらとミステリのような雰囲気も漂っているので、なおさらそう感じます。
とはいえ、物語として非常に濃密で、作品世界に没入させられる手腕は見事でした。ちょっと美術館に行ってみたくなる作品。