福田和代『オーディンの鴉』
オーディンの鴉は、いつだって私たちを『視て』いる
というわけで今回は、福田和代『オーディンの鴉』(朝日文庫)です。
はい来ました。とうとう紹介することにしました。僕が最近特に好きな作家の作品ですね。
僕が福田和代を知ったのはたしか、『怪物』(集英社文庫)がドラマになったタイミングだったかと思います(向井理と佐藤浩市の、大きな帯がつけられていてとても目立っていた)。ドラマのキャストが割と好みで、それで原作を手に取ったんだと思いますが、これが大正解でした。そしてそれ以来、とりあえず本屋を回っては福田和代の本を集める日々が始まったのです。
本作『オーディンの鴉』に出会ったのは、そんなさなかだったと思います。たしか、適当に入った本屋で見つけたんだったかな。
僕としてはオーディンといえば《ファイナルファンタジー》か《女神転生》か、くらいのゲーム脳全開のイメージしかないのですが、
《女神転生》
本作はその肩に止まっている二羽の鴉に着目した話となっております。
昨今、Twitterやfacebookなどで、軽犯罪を自慢したがる風潮があるように思いますが(そのことを称して《バカッター》などと揶揄されたりもしていますね)、本作はいわゆる、そういう輩を《晒す》ことによって社会的に抹殺してしまう集団《オーディンの鴉》との戦いを描いたサスペンスとなっております。
福田和代は基本的にはミステリ作家として扱われることが多いと思いますが、個人的にはこうした、サスペンスものを扱わせるととてもいいと思うのです。本作も非常にクオリティが高く、息をつかせぬ展開がページをめくる手を止めさせません。作者で一番お薦めの作品。