メガネストの読書日記

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ウィリアム・モール『ハマースミスのうじ虫』

 

ハマースミスのうじ虫 (創元推理文庫)

ハマースミスのうじ虫 (創元推理文庫)

 

というわけで今回は、ウィリアム・モール『ハマースミスのうじ虫』(創元推理文庫です。 

点数:7.5/10点

 

 長い間積んでましたね、これ。

 ちょっと僕の周囲で創元推理文庫の背表紙の色について話題になったことがあって、そのときにちょっと書名が上がったので、じゃあ読もうかな、と思い引っ張り出してきました。

 本書はミステリというよりはサスペンスやハードボイルド感が強く、様々な人を苦しめてきた謎の男《バゴット》を風変わりな男キャソンが追い詰めていくというのがメインストーリーになります。

 正直なところ、割と人を選ぶ話かな、というのが僕の感想です。キャソンが絶対的な正義、という立ち位置で、《バゴット》を追い詰めるためには手段を選ばないあたりに、不快感を覚える方もいるかもしれません。

 個人的にはそこは大きな問題ではなく(実際、《バゴット》は、罰せられるだけのことをしていますし、彼を罰するためには手段は選べなかったとも感じます)、最後に言い訳のように読後感を良くしようとした点にあると考えます。

 作中で、キャソン《バゴット》とある約束を交わします。それの扱いが個人的にはまったく納得がいかなかった、というのが本作の個人的な評価を下げた大きな要因でした。なんとなく、それまでキャソンが作中で取っていた『正義』のスタンスが、これでぶれてしまったように思われたのです。その一点が残念ではありましたが、本作はゆっくりと、しかし確実に《バゴット》を追いつめていくスタイルが、イギリスのどこか灰色が買った雰囲気にマッチしていて、とてもよかったように感じます。