川上未映子『水瓶』
きらきらと輝く言葉たち
川上未映子さんはちょうど芥川賞を取った前後で何冊か手にとって、それからもエッセイなんかは割と好きでずっと読んできましたが、今回はなんとも不思議な作品集です。
これを小説と言ってしまうこともできると思いますし、散文詩と言うこともできると思います。個人的な印象としては、散文詩よりかな、という感じ。小説ほど緊密に物語として機能しているわけでもなく、散文詩ほど読者の想像と解釈に依らないというか……なんか、要領を得ないことを言ってますね。だってしょうがないでしょ、散文詩とか読んだの初めてなんだから。
本作は、決して万人受けするものではないと思います(みんなに受け入れられるなら、詩はもっと市民権を得ていることでしょう)。しかし、リズムよく並べられた言葉たちはきらきらと輝きを放ち、怖く妖しい作品の世界観を彩っています。個人的なお気に入りは『いざ最低の方へ』と『星星峡』ですが、ここも意見が大きく分かれることでしょう。
あと、個人的に注目したいのがタイトル。好きなのが多くていいですね。
たとえば『バナナフィッシュにうってつけだった日』なんかは、ちょっと翻訳小説のタイトルみたいで好きですし、『戦争花嫁』はこんなタイトルの歌がありそうですね。
難解な部分は多いですが、全体に作者の言語センスとリズム感がいかんなく発揮された作品だと思います。気になる向きがあれば、ぜひ。