井上真偽『聖女の毒杯~その可能性はすでに考えた~』
奇跡は実在するさ、絶対にな
ということで今回は井上真偽『聖女の毒杯~その可能性はすでに考えた~』(講談社ノベルス)です。
前作『その可能性はすでに考えた』の続編にあたります。
やっていることは基本的に同じなのですが、上苙の不在という変化を与えることによって、物語の差別化を図っています。
また、提示される謎も『同じ杯から酒を飲んだ八人のうち、三人が死亡する』という、前回に輪をかけて不可思議なもので、なんというかこう、あらすじを読むだけでワクワクしてしまいますね。
本作の優れているところは、前作とやっていることは同じでありながら、魅力はまったく別方向に振りきっているところだと思います。ラストに明かされる真相は、人によっては肩透かしを食らうようなものかもしれませんが、その可能性から徹底的に目をそらすように作中で仕向け、このラストにつなげるのはうまいなあ、と個人的には思いました。