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メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

二階堂奥歯『八本脚の蝶』

エッセイ 評論

 

八本脚の蝶

八本脚の蝶

 

  今はもうない、その透明な図書館には、一体どんな物語が所蔵されていたのだろうか

 

 というわけで今回は、二階堂奥歯『八本脚の蝶』(ポプラ社)です

 かつて、二階堂奥歯を名乗り幻想文学方面でその才気を如何なく発揮していた女性がいました。国書刊行会の編集者だった彼女は、自身の日々をブログに綴りはじめました。それをまとめたものが本書になります。

 

 僕がこの本を手に取ったのは、多分本書が刊行されて割とすぐのことだったように思います。おおよそ十年前の僕は、まだそれほど本を読んでいるわけではなくて、特に何も持たないような少年でした(多分)。どこかで評判を聞きつけて購入したのですが、大正解でしたね、これ。Amazon的な何かで買おうとすると、最低でも定価の倍くらいするし(2016年12月18日現在)。

 そういう、本読みとしてバニラな状態で出会ったこの本は、僕にとって重要な位置にすとんと収まり、以来、折に触れて読み返すようになりました。今回も、そのうちの一回です。

 

 それでは、感想。

 正直なところ、ちょっと言葉が出てきません

 なんか、南条あや(元祖メンヘラの人、多分)と同じ箱に入れられることもある作者ですが、個人的には全く別物だと思います。というか、彼女、二階堂奥歯誰にも似ていないように思います。《二階堂奥歯》というカテゴリに、たった一人だけ属しているような、不思議な人物だなあ、と思います。

 すでに何度も読んでいる本ですが、その度に「よくも悪くも、この人に影響を与えることができた人はほぼいなかったのではないか」と思わされます。

 ある部分で傑出した人間というのは時折あらわれて、しかしろうそくの火が風に煽られて消えてしまうようにいなくなってしまうものですが、彼女もそういう類の人間だったのかな、と感じます。そういう人がこうして、ブログに自分をつづっていて、それを(その気になれば)気軽に読むことができるというのは、このインターネット社会の数少ない利点の一つであるように思います(彼女が活動したのは、すでに十年以上前ですが……)

 

 「私は物語を書けないけれど、私は物語をまもる者でありたい」

 

 そう願った彼女は、自分という物語を壊して、この世界から退場してしまいます。数多くの、二階堂奥歯の読者を残して。2013年4月のことでした。

 本書は、二階堂奥歯のおおよそ2年という短い(かどうかは人それぞれかと思いますが、僕は短いと感じました)期間をまとめたものですが、その分量は膨大。彼女は作品からの引用を多用しているのですが、その多様さに驚かされます。一体どういう人生を送ってきたら、たかだか25年くらいでこれほどの本を読んでくることができたのかと衝撃を受けました。

 

 最後になりますが、本書を読んでみようと思われた方に。

 二階堂奥歯の文章は、どこか中毒性を孕み、強い引力を持っています。『引っ張られ』ないようにご注意ください。