坂本葵『食魔 谷崎潤一郎』
あくなき食への欲求が、一人の文豪を生み出したのである
というわけで今回は、坂本葵『食魔 谷崎潤一郎』(新潮新書)です。
本書は、タイトルの通り文豪・谷崎潤一郎という人物を彼の《食魔》としての一面から論じたものとなっております。
恥ずかしながら僕は、谷崎潤一郎という作家について詳しく知らなかった(『細雪』を読んだことがあるかな、というくらい)のですが、本書は《食魔》(食道楽の、もっとずっとすごいもの、みたいな認識でよいかと思います)という特異な一面から、谷崎作品と作家本人について知ることができる一冊となっております。
ところで僕の世代的には食いしん坊といえばこの人
を思い出しますが、谷崎潤一郎もまた、この人に比肩する食いっぷりだったようです。あるいは、久住昌之(『孤独のグルメ』の作者)が谷崎潤一郎の《食魔》の部分をモデルとして、井之頭五郎というキャラクターを生み出したのかな、という気がしないでもないです(多分そんなことはないのでしょうけれど)。
しかし、本書を読めば読むほど、現代に谷崎潤一郎が生きていたら、ケーキの人として名を馳せていた可能性が微レ存……? という思いが頭をよぎります。