青山文平『半席』
というわけで今回は青山文平『半席』(新潮社)です。
点数:9・5/10点
界隈で評判になっていた時期に買って、ここまで寝かしていました(理由は聞くな)。で、今回読んでみたんですが、やはり青山文平はいいですね。
・『半席』
表題作。『春山入り』(単行本は『約定』というタイトル)にも所収されているのですが、シリーズ化に際して改めて所収される運びとなりました(多分)。
これ、いいですね。そら評判にもなるわ。ラストシーンはとりわけ素晴らしいかと思います。
・『真桑瓜』
僕はこれが好みでした。オチのつけ方が落語的というか、最後の一ひねりがいい感じに効いてるんですよね。
・『六代目中村庄蔵』
なんというか、せつない話ですね。なにかが少し違っていたら、こんなことは起こらなかったのに。そういうことは現実にもよくあると思います。
・『蓼を喰う』
これも鮮やかですね。オチがお洒落で僕は好きです。
・『見抜く者』
この中ではうーん、という感じ(あくまでも、『この短編集の中では』)。最終的にはうまくまとまるのですが、解決編が唐突すぎてね……
・『役替え』
なんだか爽やかなラストですね。こういう話なのに、謎の読後感のよさが印象に残ります。『半席』で始まり、この『役替え』で終わる、という構成は素晴らしいと感じます。
という感じ。いやあ、すごかったですね。
僕はそれほど時代小説を読まないのですが、そういう人にも読みやすく、リーダビリティがしっかりと保たれているのが本作のストロングポイントだと思います。個人的には『真桑瓜』が好きですが、やはり表題作の『半席』が完成度としてはやや抜けているかな、という印象です。
とはいえ、先程も触れましたが本作は『半席』から始まり『役替え』で終わる、という構成が素晴らしく、連作短編集かくあるべしという作品だったと感じます。