倉坂鬼一郎『新世界崩壊』
というわけで今回は、倉坂鬼一郎『新世界崩壊』(講談社ノベルス)です。
点数:7/10点
初、倉坂鬼一郎ですね。実は割と気になっていたんですが(時代小説の人、というイメージだった)、とあるところで本書を薦められたので、それなら、と初手に選ぶことにしました。
感想なんですが、これぞバカミス、という感じですね。
僕の思うバカミスというのは、
・トリックは割と笑えるレベルでばかばかしい(誉め言葉)
・それを成立させるために技巧の限りを尽くしている
・そのトリックを使いたいがために微妙におかしな部分が出てくる
という条件を満たした作品(最後は割とどうでもいいですが)なのですが、本作はこれらを満たしていたように思います。
メインのトリック自体はまあ、すぐに「これだな」と思いつく類のものだったと思うんですが本書で取り上げたいのは、別の部分なのです。
ネタバレになるので反転しますが、ノベルスに多い二段組みという段組みを利用して、上階と下階の話を同時進行させたり、行間の空白を利用して、フードエレベーターで移動したことを表現したりだとか、普通は思いつかないでしょ。いったいどんなタイミングでそれを思いついたのか、ちょっと聞いてみたい気もしますね。
そういう部分もそうですが、作中で明かされる布石もさりげなく、しかし気付いてみればあからさまに置いてあるというのも作者の技量の大きさを感じさせます。
ただ、殺された被害者が地下のレストランに卸されて、ステーキとして提供されている(ネタバレなので反転)という点に関しては、あまりにもわかりやすく、そこからこの本の構造自体も芋づる式に気付いてしまう可能性があるんじゃないか、と感じました。