ポール・オースター『ガラスの街』
一つ前の記事の作品と雰囲気が近い、ということで読んでみました。実は初オースターなので、楽しみですね。
なんとなく探偵小説のような雰囲気が漂っていますが、どちらかというとメタ小説に分類すべき作品だと思います。どこまでが『内側』でどこからが『外側』なのか曖昧で、その曖昧さが作品の雰囲気を作っています。
作中でも『ドン・キホーテ』についての言及がありますが、構造的には近しいものがあると言っていいでしょう。日本にも同じ試みをした作品があるんですが、そちらが本家の『ドン・キホーテ』のようにどこかコミカルな調子であるのに対し、本作はひたすらに静謐で、どこか煤けた雰囲気を漂わせています。そこがメタ小説として差別化を図っている点であり、本作の魅力であると言えると思います。