ジョン・ディクスン・カー『夜歩く』
今回はジョン・ディクスン・カー『夜歩く』(創元推理文庫)です。
初カー……ではなく、二冊目です。
二冊しか読んでいない人間の漠然としたイメージで申し訳ないのですが、カーといえば幻想的な雰囲気を楽しむもの、という感じがします。そういう意味で本作は、とてもよかったと思います。
正直、メイントリックは割と首をひねらざるをえないのですが、それを補って余りあるような濃密な雰囲気が圧巻です。
……ということを書いて思ったのですが、このトリックがそういう感じ(うーん、という感じのことね)になっているのは、ローランがすでに殺されているという事実(ネタバレなので反転)を隠すためのブラフなのでは、という気がしてきました。そういうことならなるほど、という感じ。
ともかく、この作品は雰囲気がとてもいいですね。濃密な妖しさ、常に漂う不穏さ、そういうものが存分に味わいたい人にはお薦めの一冊です。