貫井徳郎『光と影の誘惑』
ということで今回は、貫井徳郎『光と影の誘惑』(集英社文庫)です。
本作は短編集なので、まずは各話の感想から。
・『長く孤独な誘拐』
いやあ、鬱な話でした。個人的にはこういう話は苦手なんですが、構成はうまかったです。ただ、やや伏線に乏しい部分がある気もします。
・『二十四羽の目撃者』
好みの話でした。舞台設定と語り口が好みなのもそうなんですが、謎を少しづつ詰めていく過程が好みでした。
・『光と影の誘惑』
これも好みです。完成度の高い短編かと思います。伏線の張りかた、物語の締めかた、結末の開示の仕方、いろんな人がイメージする貫井徳郎の形がここに凝縮されていると思います。
・『我が母の教えたまいし歌』
これは……ねえ。正直なところ、僕はネタがわかっちゃったんですよね。しかもかなり早い段階で。実際問題としてその仕掛け一発勝負の話なので、楽しさが八割減のまま読み進めました。
何が悲しいって、予想した結末そのままだったってことです。ほんと悲しい。
まあでも、ラストは好きです。この一文で終わる、というのは好みでしたね。
という感じ。三作目まではクオリティが高くて満足でしたが、最後の一作がね……
誤解のなきよう言っておきたいのですが、最後の『我が母の教えたまいし歌』は完成度が低いというわけではないのです。ただ、前にこの表題作があってからの、これというのは……
収録順が違っていれば……という思いが強いですね、正直。