メガネストの読書日記

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北村薫『六の宮の姫君』

 

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

 
秋の花 (創元推理文庫)

秋の花 (創元推理文庫)

 

   というわけで今回は、北村薫『六の宮の姫君』(創元推理文庫です。

 《円紫師匠と私》シリーズの四冊目ですが、このシリーズを読むのも随分久しぶりですね。前に読んだのは去年の……ええっと、いつだったっけ(健忘症)。

 それはともかくとして、今回は「最近骨太なミステリばっかり読んでるから、ちょっと息抜き的に読めるものにしよう」と思って本書を手に取ったんですが、全然息抜きにならなかったです。骨太でした。このシリーズだったら日常の謎だし、気軽にいけると思ったんです……浅はかでした。っていうか、三冊目の『秋の花』の時点で、日常の謎からは脱却していたわけですが、それはすっかり忘れていました。

 で、内容なんですが、芥川龍之介『六の宮の姫君』にまつわる謎を追いかけていく、という、これまでとはやや趣が違うものとなっております。これをミステリとするかは結構意見の分かれるところかと思いますが、個人的にはミステリというよりも、文学論を小説にしてみた、という風情の作品だと感じました。

 序盤は『六の宮の姫君』論が展開され、人によってはやや退屈に感じるところだと思いますが、ここでしっかりと概要を示しておくことによって、物語の土台をしっかりと構築しているように思います。

 そうして前半で舞台を整えてからの、後半の展開はスピーディーで、特に円紫師匠が登場してからはいよいいこのシリーズらしい雰囲気になってきます。そう考えると視点の主はあくまでも「私」であるにもかかわらず、このシリーズの主軸は円紫師匠に置かれていて、円紫師匠の立ち位置はまさに真打という感じですね。