2017面白かったミステリ(海外版)
ということで、次は海外版。翻訳物はあまり読んでいなかったので、十作に届いていませんが、のんびり紹介していきたいと思います。
5・ゴードン・マカルパイン『青鉛筆の女』(創元推理文庫)
昨年初訳された作家です。
緻密なプロットと息をつかせぬ展開が持ち味で、解釈が人によって変わってきそうな物語だな、という感じ。ただし、どんな解釈に至ったところでこの作品が面白いことには変わりなく、もっと広く読まれてほしいと感じました。
4・パット・マガー『七人のおば』(創元推理文庫)
これも傑作でした。
性格が歪みまくっている七人のおばのうち、誰が殺されたのかを推理する、というのがメインストーリーになるのですが、この骨子に付随した肉がすごいのです。
なにせ、登場人物の九割がおクソで、殺される理由しか見当たらない(おばだけじゃなく、男性陣もなかなかのもの)。にもかかわらずそのクソっぷりが千差万別で、恐ろしいくらい巧みに書き分けがなされているのが本作のすごいところ。こういうのを「人間が書けている」というのでしょうなあ。
3・スティーヴン・グリーンリーフ『匿名原稿』(ハヤカワ文庫)
ハードボイルドものからも一冊。ハードボイルドの主人公って、どうして毎回頭を殴られるんでしょうね(偏見)。
ある出版社に匿名の原稿が送られてきて、その作者を探していくところから物語は始まるわけですが、そこから物語は大きなうねりを生むことになります。
僕はハードボイルドものはあまり読まないのですが、本作が面白いことはわかります。見かけたらぜひ読んでほしいところ。
2・陳浩基『13・67』(文藝春秋)
昨年一番の収穫といえば、本作でしょう。
稀代の名刑事クワンの最期を描いた第一話『白と黒の間の真実』から、時代を遡っていく逆年代記というスタイルがとられているのですが、なぜこのスタイルで書き進めていったのか……それは最後のページを読んだ瞬間にわかります。
ミステリというのは本来、再読性がそれほど高くはないジャンルだと思うのですが、本作はきっと、最後まで読んだらまたすぐ最初のページに戻りたくなることでしょう。
一番は第四話の『テミスの天秤』ですが、これはミステリとしてよし、刑事ものとしてよし、エンタメとしてよしの三拍子揃った傑作で、ぜひとも読んでほしい作品です。
1・ミッシェル・ビュッシ『黒い睡蓮』(集英社文庫)
『13・67』と迷ったのですが、好みの差でこちらを一位に。
僕はフランスミステリをほとんど読んだことがないのですが(ルメートルくらい)、これがフランスミステリなのだとすると、今年はもっと読んでいかなければならないなあ、と思います。それくらいの傑作。
伏線を緻密に張り巡らし、それを回収しつつも大仕掛けで分回してくる圧倒的なパワー。そしてそのあとに訪れるリリカルな結末。ミステリとしてもいいですが、物語として良質で、いい余韻が残ります。少し長めですが、ぜひ読んでほしい作品。
という感じです。今年は翻訳ものをもっと読んでいきたいですね。