2017面白かったミステリ(国内版)
再起動、いたします。
ということで半年ほど更新をしていなかったブログを、再び更新していこうかと思います。新年でキリもいいしね(もう八日ですが……)。
信念ということで、リハビリがてら、昨年読んだミステリのなかで面白かったものを紹介していこうかな、と思っています。
それではまず、第十位から
10・早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』(講談社文庫)
十位にこいつが入っている時点で色々とお察しいただけると思うのですが、このランキングは完全に僕の好みですね。
いや、でも面白いんですよ。第50回メフィスト賞を受賞した作品ですが、いかにもメフィスト賞っぽい作品ですね(超偏見)。
この作品を一言で表すのなら、「バカ」ですね。「バカミス」じゃなくて「バカ」です。別にけなしているわけではなく、作中に隠された真実を知った読者はきっと、みんな同じ感想を抱くと思うのです。そのうえでミステリとして端正で、物語を納得させられてしまう強烈なパワーを持っているとか。もうね、最高ですよ。作者の早坂吝さんには、今後もこの地平を走り続けてほしいところ。
9・岩下悠子『水底は京の朝』(新潮社)
九位はこの作品。あまり話題にもならず、皆さん読まれてもいないようなので、ぜひ読んでほしいです。
ジャンルとしては撮影所を舞台にした日常の謎なのですが、そこに幻想文学のエッセンスを入れてきたのが新しいと思うのです。撮影所というのは昔から様々な「いわく」があるものですが(女のすすり泣く声が聞こえたとか、子供が毬をついて遊んでたとか、そういうの)、そうした不思議を幻想文学に消化していて、なかなか良かったのではないかと思います。
なお、作者の岩下悠子さんは、映画監督で、本作が小説デビューとなるのですが、今後が楽しみです。
八位はこちら。いやあ、よかったですね。
あらすじを見ると割とありがちなストーリーではあるのですが、本作の重心はそこにはなく、むしろ、そういう物語が非凡な展開を見せていく部分に重点が置かれた作品となっております。
本作は徹底的にロジカルに話が展開していき、主人公の氷川透は論理のみを武器にして事件に立ち向かいます。はたして彼はそのたった一つの武器で事件を終わらせることができるのか……。
いやー、これはすごかったですねえ。
なにかを語るとネタバレになりそうなので、あまり多くを語るつもりはないのですが、このネタを破綻なく書き上げた手腕は少し恐ろしくもあります。依井貴裕さんはこれ以降単行本を上梓していませんが、さもありなんといったところ。
古処誠二さんといえば戦争文学のイメージで、実際そういう作品を多く書いているわけですが、本作は戦争文学ではありません。しかし、古処エッセンスを存分に感じることができます。
暗闇の中で発生した事件をロジカルに解決していく様は鮮やかで、残された疑問が最終的に収まるべきところに収まっていく。……これでデビュー二作目っすか。
5・井上真偽『聖女の毒杯~その可能性はすでに考えた~』(講談社ノベルス)
これはたしか、停止する前のブログで感想を書いていますね。井上真偽『聖女の毒杯~その可能性はすでに考えた~』 - メガネストの読書日記
多重解決もので、誤った推理がたくさん出てくるのですが、その一つ一つが一作書けるくらいのクオリティで驚くことしきり。そして、そこからの解決編。素晴らしかったです。
4・今村昌弘『屍人荘の殺人』
今もっともホットなミステリといえば、本作でしょう。発行部数も十万部を突破したのだとか。いやあ、すごいですねえ。
本作は形だけを見れば、クローズドサークルが形成されてそこで殺人事件が起こる館もので……という、もはや王道となった感もある舞台設定なのですが、これをインターネットや携帯電話が普及しきった現代で成立させた発想が素晴らしいですね。なるほどこういう方法があったかと(二度と使えないと思いますが)。
正直なところ、事件の細部に気にかかる部分はあるのですが、それをものともしないリーダビリティの高さは圧巻で、「なにかミステリを読みたいんだけど、どれがいいかなあ?」と悩んでいる人に真っ先に読んでもらいたい一冊でした。
つーかお前、まだ読んでなかったんかい、と。
それはともかく、すごかったですね、これは。なにせ外れがない。
トリッキーで、かつロジカルで、その両方を絶妙なバランスで成立させているのが素晴らしい。長く読み継がれていく物語というのは、こういうものなのかと。
特に好きなのは『五つの時計』『道化師の檻』『早春に死す』『薔薇荘殺人事件』『急行出雲』の五作。とりわけ『道化師の檻』は素晴らしかったです。
二位はこちら。
リンクは創元推理文庫版を貼ってあるのですが、僕が読んだのは単行本版で、そちらにはエッチングの挿絵がついているのです。これがまたいい味を出しているので、できれば単行本で読んでほしいところ(手に入るかは知りません)。
十重二十重に織られた精緻な物語で、すべての要素が巧妙に重なり合っている作品です。
1・連城三紀彦『戻り川心中』(光文社文庫)
一位はこちら。……っていうか、これ読んだの去年だったのか。
こちらもブログに感想を書いてますね。連城三紀彦『戻り川心中』 - メガネストの読書日記
全編のクオリティが高く、とりわけ表題作は素晴らしいの一言。無人島に持っていく短編を一つ選べって言われたら、表題作を持っていくことでしょう。嘘ですけど。
こんな感じ。今年もたくさんの小説を読めたらいいなあ。