ベリンダ・バウアー『ブラックランズ』
- 作者: ベリンダバウアー,Belinda Bauer,杉本葉子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/10/06
- メディア: 文庫
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叔父の死体を見つければ、すべてが変わると思ったんだ。
というわけで今回は、ベリンダ・バウアー『ブラックランズ』(小学館文庫)です。
お初の作家です。なんでも、これがデビュー作なのだとか。カテゴリが《ミステリ》になっていますが、どちらかといえばスリラーという表現がぴったりくるような作品でした。
それでは、感想。
結論から言えば、すげーよかったです。今年のベスト候補。
舞台がイギリスなのですが、イギリスのどこか煙ったような薄暗さと、湿った不気味さが文体からにじみ出ているようでした。
少年が主人公、というのもよかったように思います。
まだティーンエイジャーにも満たない少年スティーヴンから見た、暗く影を射している家族の様子や、自分を取り巻く状況、そして、その中に一縷の希望を見出す様子が素晴らしい。思うに、誰にでもこういう側面は存在していて、それを拡大した物語がこの『ブラックランズ』なのではないかと思いました。
作中でスティーヴンは叔父の死体を捜すために殺人犯と文通をするのですが、ここがまた素晴らしかったです。殺人犯が刑務所の中にいるという状況から、まともなやりとりができない中で、お互いの知恵をせめぎ合うようなやり取りは鳥肌が立ちました。しいて言うのであれば、スティーヴンがやや大人びすぎているような気もしましたが、物語に登場する少年としてはそこまで違和感はないかな、と思います。
そしてなにより心を惹きつけられたのが、ラストの展開でした。
殺人犯とのやりとりを経て、スティーヴンはいよいよ《ブラックランズ》に死体を捜しに行くのだが……という、物語が終わりに向かっていくパートは圧巻のひと言で、ここだけを読んでほしいがために本作を強く勧めたい、といっても過言ではありません。
おすすめです、さあ読むのだ!