こだま『夫のちんぽが入らない』
夫のちんぽが入らない
ということで今回は、こだま『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)です。
方々で話題になった作品が、満を持して刊行されました。
僕がこの本を知ったのはいつだったか……ちょっと記憶が曖昧ですが、昨年の十月くらいだったかと思います。その時点で購入を決め、そして買ってすぐに読んでみたわけですが――
内容はいたってシンプルで、タイトルの通りです。セックスすることができない二人の、二十年という月日を綴った物語です。
文章は静かに並んでいて、どこか他人事のようにも感じるのですが、その距離の置き方とか感情の形がおそろしくリアルに息づいていて、読んでいると当たり前のように現実感が自分の中に根付いていくのがわかります。
男と女でなく、一人と一人が肩を寄せて生きていく様子が、たった200ページ足らずに込められています。
文章のリズムは決してよくないのですが、文章に瑕疵がないのと、作者が自分の中でこの問題をしっかりとらえているように思えるのとで、ぐいぐい読ませます。なんとなく、読者層としては女性を狙っているように思うのですが、なにか少しでも不安があったり、人に言いづらい悩みを抱えたりしている人に読んでほしいと思いました。