ジェームス・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
なんにも残らなかった、人生だった
というわけで今回は、ジェームス・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(新潮文庫)です。
本格ハードボイルドの名作ですが、読むのは今回が初めてです。というか、ハードボイルドについて僕は全然明るくないので、期待と不安の入り混じった読書になったわけですが――。
感想ですが、面白かったです。「ハードボイルドってこんな感じ」と想像するところを、まっすぐに走っていくというか、これをまず最初に読んでおけば、ハードボイルドというジャンルについておおよそ理解することができるような、そういう作品だと感じます。
ただ、なにぶん一世紀近くも前の作品なので(発表は1934年)、古めかしさはあります。ただし物語自体に古さは感じられず、今でもさほど違和感なく読むことができると思います。
ところで、僕が持っているのは昭和38年発行の版なのですが、さすがに訳文が古くて読みにくかったです。カリフォルニアがキャリフォニアと訳されていたり、登場人物に『吾輩』という一人称を普通に使う男がいたりと、そういう部分での戸惑いはありました。現行の版ではどうなっているのでしょうか。
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