イアン・マキューアン『アムステルダム』
たった一枚の写真が、運命を大きく変えた。
ということで今回は、イアン・マキューアン『アムステルダム』(新潮文庫)です。
変態作家と(僕の中で)名高いマキューアンの代表作の一つが、本作となります。二本ではなかなか、こういう小説がメインストリームに乗るということが想像できませんが、本国イギリスではどうなのでしょう。
それはさておき、感想。
なんだか、マキューアンっぽくないですね、この本。
マキューアンといえばなんだかこう、もっとタブーみたいなところにゴリゴリ踏み入っていく印象で、頭の中の本棚ではケッチャムなんかと似たような場所に入れていたのですが、本作はそれとはやや趣が違うように思います。
ありがちな話、といってしまえばそれまでなのですが、どこにでもあり得る過酷な運命を美しい文体で見事に描き上げる手腕は、まさに脱帽の一言です。
本書でマキューアンを知って、次々読んでいこうとするとやや面食らう部分はあるかもしれませんが、それを置いてもぜひとも読んでほしい一冊。