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メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

竹本健治『涙香迷宮』

ミステリ

 

涙香迷宮

涙香迷宮

 

 

 巨人が残した歌には、暗号が隠されている。

 

 というわけで今回は、竹本健治『涙香迷宮』(講談社です。

 新年一発目、ということでね。昨年度のランキングを席巻した作品の登場です。

 本作は天才囲碁棋士牧場智久を主人公としたシリーズものの最新作ですが、ここから読み始めてもまったく問題はないでしょう。というか、僕がそうですし

 

 で、感想に移ろうかと思うんですが、最初に断っておきたいことがあります。

僕はこういう、『〇〇に隠された本当の意味!!』的な謎解きがとても好きなのです

高田高史『QED~百人一首の呪~』の感想でも触れたことですが……)。なので、感想としては結構甘目かもしれません。

 

 それでは感想。

 いやあ、面白かった! やっぱり暗号解読ものはいいですね!

 あらゆる分野で傑出した才覚を見せた人物、黒岩涙香が残した暗号、という舞台設定がまずよかったですね。緻密に組み上げられたパズルを一つずつ紐解いていくという、出題者と回答者のせめぎ合いが見事です。

 そして、なによりも注目してほしいのが、暗号と、それを彩る《いろは歌》です。

 いろは歌というのは『いろはにほへと』の歌のように、五十音全てを一度だけ使って作る歌のことで、作中にはこれが大量に出てきます。これがまた素晴らしい出来で、作中のいろは歌を眺めているだけで、個人的には満足感が高かったです。特に作中の核となるいくつかの歌はまさに超絶技巧といっていい出来で、読みながら一人「ははあ」と感嘆の溜息をもらしてしまったほどです。

 なお、作中では殺人事件も起こるのですが、こちらは味付け程度のものと考えるべきでしょう。本作の醍醐味はあくまでも涙香の遺した謎であって、ほかのすべてはそれを演出するためのものであるように感じます。物語的には複線の張り方がやや粗いようにも思いますが、そんなものはこの大きく、魅力的な謎の前では霞んでしまいます。恐ろしく巨大で繊細なこの暗号に触れるだけで、本作を読む価値があるでしょう。おすすめです。