メガネストの読書日記

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獅子宮敏彦『砂楼に登りし者たち』

 

砂楼に登りし者たち (ミステリ・フロンティア)

砂楼に登りし者たち (ミステリ・フロンティア)

 

  そうか、すべてはつながっていたのですね!

 

 ということで今回は、獅子宮敏彦『砂楼を登りし者たち』(東京創元社ミステリフロンティア)です。

 

 本作は連作短編集になりますので、個別に感想をば。

 

・『諏訪堕天使宮』

 諏訪王家を舞台とした、不可能犯罪のお話。

 ところどころで割とはっきりと「おや?」と感じるポイントがあり、それが真相に密接にかかわってくるあたり、ちょっとまっすぐすぎるかなあ、という気がします。

 

・『美濃蛇念堂』

 シチュエーションがとても好みの一編。

 トリック自体は割と斬新だったように思います。しかし、この話において重要なのは、トリックそれ自体ではなく、『なぜ』そんなことをしたのか、という理由のほうでしょう。

 

・『大和幻争伝』

 他とは見事なまでにテイストが違っていて、ちょっとおもしろいですね。ちょっと山田風太郎っぽい気もします。

 少しトリックに無理があるような気もしますが、作品の雰囲気が良かったので良しとします。

 

・『織田瀆神譜』

 メインとなる中編。これまで多少の無理を通しつつも貫いてきたテーマをしっかりと回収し、最後におまけともいえる謎解きもありで、個人的に満足の一編。

 

 という感じでした。

 最近読んでいるのは『いつ、どこで、なぜ買ったか思い出せないシリーズ』なのですが、本作もちょっと思い出せないですねえ……どこかで評判を聞いたのだと思いますが……

 個別に見ると、やや無理があるトリックも使われているのですが、本作で重要なのは、トリックそれ自体ではなく、そこに含まれているテーマであるように思うのです。

『織田讀神伝』の項で《おまけの謎解き》と書きましたが、実際のところこの謎解きのほうこそが、本作のメインであるように思います。ここの解決に合理的な意味をつけるために、四つの謎を残夢という老医師に解かせていったのではないか、という印象を受けました。

 トリックのテーマを一貫させ、四つの毛色が違う物語で彩る手法は、なかなか見事なものでした。是非読んでください!

 といってみたものの、この本、今手に入れるのは簡単なんですかねえ……?