浅暮三文『ペートリ・ハイル! ~あるいは妻を騙して釣りに行く方法~』
川に流れているのは水だけではない。そこには素敵な時間が流れているのだ
というわけで今回は、浅暮三文『ペートリ・ハイル! ~あるいは妻を騙して釣りに行く方法~』(牧野出版)です。
浅暮三文といえば、なんだか個性的なミステリを書いている人、という印象ですが(メフィスト賞作家だしね……)、本作は彼の趣味である釣りを題材にしたエッセイです。
タイトルにある通り、作中で浅暮氏は「海外旅行に連れて行ってしんぜよう」と細君をそそのかし、旅行先でひたすらに釣りをします。なにがすごいって、新婚旅行として出かけたフランスでも、浅暮氏は普通に釣りをしているんですよね……
このエッセイのせいで、浅暮三文=釣りの人(ハムの人みたいな)という印象がついてしまいました。
《参考画像・ハムの人》
さて、本書はそんな風に奥様を騙してヨーロッパ各地で釣りをする《妻を騙して釣りに行く方法》と、その旅程で目に付いた様々を語る《釣り旅の脇道で》、釣りに関するあれこれをまとめた《釣人雑記》、そして浅暮氏が釣りを始めたきっかけとなった話をまとめた《僕が釣りをはじめた理由》という、四部構成となっております。
全体的にどこかおかしみを孕んだ文章で、エッセイとして面白いのですが、僕が一番楽しんだのは第三部の《釣人雑記》です。釣りの話といっておきながら、なぜか猫の話をしていたり、トイレの話をしていたり、あるいは〇〇〇(尾籠な単語なので伏字、参考画像を見られたし)の話などもしていて、目先が変わって面白く読むことができました。
しかし、タイトルは《あるいは妻を騙して釣りに行く方法》となっていますが、奥様としては、「しめしめ、旅行中の何日か釣りに付き合えば、毎年海外旅行ができる」と思ったのではないでしょうか。
これじゃあどちらが騙されているのかよく判りませんね。