相沢沙呼『小説の神様』
“文学少女"シリーズ 本編+外伝 文庫 全16巻 完結セット (ファミ通文庫)
- 作者: 野村美月
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/09/08
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
僕たちは、これからも、小説を書き続けていく。
というわけで今回は、相沢沙呼『小説の神様』(講談社タイガ)です。
このブログ的には初登場の相沢沙呼さんですが、僕個人としてはデビュー作の『午前零時のサンドリヨン』(創元推理文庫)から読み続けている作家でもあります。
高校生×小説という組み合わせは、これまでもいくつかあったように思うのですが、まず思い出されるのはやはり野村美月《文学少女》シリーズ(ファミ通文庫)でしょうか。内容的には全然違うのですが、こちらもぜひ読んでほしいところではあります。
とりあえず、感想にいきましょう。
小説における理想と現実が、ここにあるような気がします。
主人公の千谷くんが、打ちのめされた側から見た、小説や出版業界の現実を語れば、ヒロインの小余綾さんが、理想を唱えて『なんのために小説を書くのか?』と問い続ける。ある意味で青春小説としてまっとうな構図が延々と繰り広げられていくわけですが、ある部分から雲行きが変わります。
ネタバレを避けていくスタイルなので言及は控えますが、僕は読み進めつつも、小余綾さんにどうしても共感する部分が見いだせずにいて、さてどうしたものかと思っていたのですが、なるほどそういうことだったかと。その事実を念頭に踏まえれば、共感できなかった理由も、読み進めつつ感じた齟齬のようなものも、すべて説明がつくように思いました。
この作品のテーマはずばり『なぜ小説を書くのか』ということになるでしょう。
作家である千谷くんにとってそれは『なぜ生きるのか』という問いかけにも近いもののように思えるのですが、こういうことで悩むのも割と、中高生の特権のような気がします。年経ると案外、そういうことに対するシンプルな答えを、思いもよらないところからあっさりと見つけることもあって、こういう悩み事は縁遠くなっていく気もします。難しいように思える悩みにも、答えは案外シンプルで、一番大切なことなのかもしれない、と感じさせられます(とある歌でもそんな風に歌われていることですし)。
創作をする人にとっては創作するうえでの心構えとして、そうでない人には良質の青春小説として楽しんでほしい一冊でした。