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メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

小沼丹『黒いハンカチ』

ミステリ

 

黒いハンカチ (創元推理文庫)

黒いハンカチ (創元推理文庫)

 

  あたし、おかしいと思ったのよ

 

 というわけで今回は小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫です。

 なんと、六十年ほども昔の作品になります。うちの両親さえ生まれていなかった頃(!!)の作品ですね。しかし、古めかしさなどまったくありません。

 本作はA女学院教師のニシ・アズマ女史を主人公とした連作短編集で、大枠では日常の謎に分類される作品になるようにも思います。

 《日常の謎》というジャンルの元祖は北村薫《円紫師匠と私》シリーズである、というようなことを以前の記事で言ったような気がするのですが、こちらのほうが圧倒的に古い作品ですね。もっとも、日常の謎、というよりはちょっとした事件を解決する、といった感じなので、これをジャンルに含めていいかは賛否ありそうですが(^^;

 基本的には物語のテンプレがはっきりしていて、『事件が起こり→ニシ・アズマ先生がなにかに気付いて→事件解決』という形は所収されているどの作品でも踏襲されています。

 で、感想なんですけど、面白かったです。ここ最近の《日常の謎》系の作品を読んでいると、やや薄味に感じるかもしれませんが、そもそもが一話二十ページくらいしかない短い話ばかりなので、このくらいのライトさがちょうどいいように思います。

 特筆すべきは、クラシックな雰囲気が漂っているにもかかわらず、まったく古さを感じさせないところだと思います。

 六十年も前の作品なので、当然文体や作中の人物の考え方なんかは、その当時のものであって現在のものとはそぐわないのですが、そういう部分を除けば最近の作品としても通用するんじゃないかな。

 これに関しては、作者が意図的にそういう、いつ読んでも古さを感じさせないような書き方をしているんじゃないかと思うのです。

 まさか、六十年後も読まれているとは作者も考えていなかったでしょうが、発表から年月が経っても、変わらず親しまれるように、あるいはそうなってほしいという意図があるようにも感じます。

 実際、僕なんかは(おそらくは)当時読んだ人たちと同じように楽しむことができましたし、もっと広く読んでほしい作品だと感じました。

 

 ただ、一つだけ声を大にして言わせていただきたい。

 

 ニシ先生! 眼鏡はずっとかけておいてください!(台無しか)