伏瀬『転生したらスライムだった件⑦』
その愚かさを、深淵の底で反省するがいい――
ということで今回は、伏瀬『転生したらスライムだった件⑦』(GCノベルズ)です。
前巻まで続いていた《テンペスト騒乱》編でも少し登場した、ヒナタ・サカグチが本格的に物語に参戦します。
騒乱を無事に乗り切ったリムルたちの報復を恐れた聖教会は、争いを避けるために動き始めます。
純粋に謝罪のために魔物の国を目指すヒナタでしたが、そこに様々な思惑が絡まって――というのがこの巻のお話になります。
この巻――というよりも前回の《テンペスト騒乱》編から顕著ですが、戦場が複数立つこともあって、様々なキャラクターの視点から物語が語られています。個人的には、それらがもう少しうまく絡み合ってくれると面白いのかな、と思います。
もっとも、ストレスフリーな読書を求められるこの系統の作品では、そういう複雑な要素をできる限り排除する方向に動くのがいいのかもしれませんけど……
この巻は基本的に、二本の縦軸が存在しています。一つはすでに語ってきたヒナタを筆頭とした聖教会とのやりとり、もう一つはテンペストに騒乱をもたらしたファルムス王国の処遇。
あえて『処遇』という言葉を使いましたが、まさにそういう表現が似合うような事後処理でした。なにせ、ファルムスに選択肢がほぼ与えられていないのですから。もっとも、五巻の結果を見るに致し方ないことではあるのですけれど……
この巻において、聖教会に関するちょっとした事実が開示されるのですが、これのインパクトはちょっと薄かったかな、と感じます。
ヒナタの視点で語られる部分が割と多い巻なので、インパクトを残すのはやや難しいようにも思うのですが、割と前半のあたりでその事実がさらっと出てきてしまうため、ラスト近辺のあのシーンが少し弱くなってしまったのは残念なところ。なれば、意識的にその事実を書かないように表現していって、ラスト近辺のシーンにつなげるというのがよかったのかな、というようなことを思いました。
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