メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

秀章『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』

 

  この時はまだうまくいってたんだよなあ(遠い目)

 

 ということで今回は、秀章『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』(スニーカー文庫です。

 ……前回の記事からの、これである。僕の節操のなさが如実に表れている素敵な記事の並びですね!

 それはさておき、感想。

 莫大な財宝七氏族軍資を探す冒険者が跋扈する世界、《なんともない白魔導士ユーリの所属する旅団は、七氏族軍資にもっとも近いといわれていた。

 そんなユーリ一行があるとき、ダンジョンの最奥に封印されていたものを開放すると、それは絶世の美少女で――

 という話。そこからの展開はまあ、タイトルの通りです。

 以上、終了!

 

 ……まじめにやります、ハイ。だから眼鏡を取り上げないでくださいごめんなさい。

 内容なんですが、基本的にはタイトルの通りです。それまでうまくやってきたはずの旅団の面々が、一人の美女を巡って険悪になるという、ありがちなお話なんですが、本書は現実世界ではなく、ファンタジーの世界でこれをやった、というのが割と珍しいように思います。

 ただ、話としては微妙の一言に尽きますね。

 本作にはコネクテルという携帯電話のようなものが出てくる(まんまスマホだと思ってもらえれば間違いない)のですが、まずこれが登場する必然性が感じられないというのは、大きな問題だと思います。タイトルの状況を演出するためだけの道具ととらえることもできなくはないでしょうが、じゃあこのコネクテルがなければ絶対にこの状況が作り出せないのか、といわれればそんなこともないでしょう。

 正直なところ、コネクテルという道具を抜きにして考えれば、本当によくある話でよくある結末の作品になってしまうので、ここで差別化を図ろうとしたのは理解できるのですが、なればこそファンタジーの世界観とこのコネクテルという道具をもっと親和させてほしかった、というのが正直な感想です。

 他にも、なぜファンタジーの世界観でこれをやってみようと思ったのか、というのも個人的には疑問です。

 ここまで割とボロクソに言っといてあれですけど、面白いんですよ、この作品。会話のテンポもいいし、文章も変なくせがないから読みやすいし。

 でも、じゃあこの話はなんでファンタジーの世界で書かなきゃいけなかったの? という疑問が、どうしても頭から離れないのです。

 いや、わかるんですよ。「現実世界でありふれた話をファンタジーで書いてみたら面白いんじゃね?」って発想。でもこの作品、本当にただそれだけなんじゃないの

 もう一度言いますが、この作品は面白いと思うのです。でも、いわゆるリアルの世界観で同じ話を書いたとしても、同じような面白さだったんじゃないかなあ、と思ってしまうわけです。なんというか、わざわざ一ひねりした意味がないというか……素直に『面白かった!』と言い切れない理由は、おそらくこのあたりでしょう。ではどうすればよかったか、といわれると、まあ困るわけですが……

 

 総括すると、面白いけど惜しい作品、ということになるでしょうか。