久住四季『星読島に星は流れた』
しかし、それでも。
たしかにあの日、星読島に星は流れた。
というわけで今回は、久住四季『星読島に星は流れた』(創元推理文庫)です。
この作者、前々から名前は知っていたのですが、作品を呼んだのは今回が初めてです。いやあ、面白かった。
数年に一度、隕石が降る《星読島》。ボストンにほど近い街レイラタウンで医師として暮らす加藤盤は、ある日《星読島》への招待を受けたのだが……
というお話。
なんというかこう、舞台設定がとてもよかったですね。《数年に一度、隕石が降る島》。この舞台を思いついた時点で小説としての成功が約束されているような、そんな雰囲気さえ漂ってきますね、この《星読島》という舞台からは。
一応、ミステリという触れ込みなのですが(そして実際、そう読んでもとても面白いのですが)、主人公の盤を、《星読島》という舞台と隕石という道具を使って描いた物語としての比重が非常に大きいのではないかと感じます。
天才天文学者のサラ・ローウェルをはじめとした、《星読島》に集った人々と出会うことによって、盤が変化していく様子が非常に丁寧に描かれていて、非常に好感が持てます。次回作にも期待したくなる出来でした。