群ようこ『トラブルクッキング』
この〇〇(好きな料理名を入れてね)を作ったのは誰だァッ!!!(©海原雄山)
というわけで今回は、群ようこ『トラブルクッキング』(集英社文庫)です。
読んでタイトルのごとし。料理が苦手な作者が料理を失敗するエッセイです。
昨今、インターネッツなどではだいぶん笑えない感じの失敗料理の話題も聞かれますが、本作に出て来るものはそこまでではないかな、という感じ。どちらかといえば文章の軽快さと、失敗の微妙な『あるある』感を楽しむエッセイだなあ、という印象。もっとも、僕が料理をしてきたこれまでで、こういう時期は一切なかったわけですけど。
失敗の内容も様々で、微妙に食べられそうなレベルの失敗から、星一徹ばりのちゃぶ台返しを披露したくなるレベルのもの
まで、様々な失敗が記されています。群ようこといえば『かもめ食堂』(幻冬舎文庫)の印象が強く、本人もなんとなく料理が上手な印象を勝手に持っていたので、一ページ目を読んだ瞬間に、
「ええ……」
となったわけです。まあ、面白かったんですが。
最後のカレーの話を読んでから、もう一度冒頭の肉じゃがの話に戻って読んでみると、リアルに谷沢の消息を知ったときの安西先生のようなリアクション
が出てしまいました。もっとも、そういう楽しみ方をするエッセイだと思うので、それでいいのでしょう。むしろ、立派に料理を作れるようになっていたらだめなんじゃ……という気さえしてきます。
ちなみに本書は1995年の本(ハードカバー)で、連載は1992年から始まっている様子。ほぼほぼ25年前なわけですが、今作者は料理の腕前は上達したのですかね。