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メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

いしいしんじ『ポーの話』

一般文芸

 

ポーの話 (新潮文庫)

ポーの話 (新潮文庫)

 

 五百年ぶりの雨は、ポーをどこへと連れていくのか。

 

 というわけで今回は、いしいしんじ『ポーの話』(新潮文庫です。

 お初の作家さんです。

 なんでこの本が部屋にあるか、よくわかりません(^^;)。

 明らかに自分で買ったはずなんですが、いつ、どこで、どうして買ったのかまったく覚えていないのです。なんだったかな……書名に覚えがあるので、どこかで面白いという評判を聞きつけてそれで買ったんだと思うんですが。

 そんな状態なのでこの本は、本棚の奥のほうに(多分)長らく眠っていたのですが、このほどちょっと思い立って読んでみたわけです。

 

 なに本棚の奥底で眠らせてんだ、自分!

            どうして文庫になるまで放っておいたんだ!

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 うちのあったのはハードカバーなんですが、この本文庫になってるのね八年も前に。一体いつ買ったんですかねえ……

 

 さて、気を取り直して感想です。

 面白かった。これは本当によかった。

 川で生まれたポーという少年の生涯を描いた作品ですがその分量(約430頁)よりも濃密な物語だと感じました。作品の雰囲気はどことなく吉田篤弘に似ている気がしないでもないですが、どちらが好きかは好みの問題になると思います。……僕ですか? どっちも好きですねえ。優柔不断で申し訳ない(^^;)

 

 作中にある、天気売りという男の、

 

  ❝そういうのは、てりかえしです。ゆびはさんだり、ころんだり、そんなのいくら

  でも、まちがうのです。ポーのいちばんふかい底で、まちがったことをしないの

  が、だいじなんですよ❞ 

 

  ❝かなしくて、たいせつなもの、たくさんあります。そっちのほうが、おおいくら

  い。かなしいぶん、いっそうたいせつに、あつかわなくちゃいけない❞

 

 という二つの言葉が妙に印象に残っていて、こういうことを伝えたいがためにこの物語は生まれたのかもしれない、とも思いました。一見して、当たり前のようにも思えることではありますが、ときに物語はそういうことを気付かせてくれるようにも思います。

 作中のほとんどは流れる川がその舞台となっています(川の描写自体はそれほど多くないのですが、印象として強く残るように思います)が、もしかしたらポーという人物、それ自体が川だったのかもしれない、と読後にぼんやりと感じました。

 また、物語自体もどこか、川の流れるようなリズムを持っていて、文章がすっと入ってくるような感覚もありました。