メガネストの読書日記

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渡瀬草一郎『空ノ鐘の響く惑星で』総括

 

 

 

  前回シリーズ全作の感想を書き終えたこの渡瀬草一郎空ノ鐘の響く惑星で』(電撃文庫

 今回はその総括をしていこうと思います。

 基本的にはネタバレをしていくスタイルなので、シリーズを読破してからこの記事を読まれることをお勧めします

 あ、ネタバレを気にしない方はそのままどうぞ。

 

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 さて、過去記事にも目を通していただいたところで、総括をば。

 全編通して遊びのほとんどない、緊密に練り込まれたファンタジーといった風情で、とにかく良質のファンタジーを楽しみたい、という方にはお薦めの作品です。

 半面、ライトノベルらしさというものはほとんどなく、キャラクター同士の掛け合いやコミカルな描写が好きな方は、あまり楽しめないかもしれません。

 

 キャラクターの描写でも少し不満が。

 作中ではハーミットがかなりの使い手であるという描写がされていますが、それが読者に伝わりにくいようにも思います。というか、僕にはあまり伝わってきませんでした。他にも、メビウスは立ち位置と登場のしかたの割にはあっさりと倒されてしまったのもマイナス感があります。

 逆に優遇されていたのは、バロッサ、ベルナルフォン、ライナスティあたりでしょうか。特にバロッサなどは登場も遅く、出てきたシーンもそれほど多くはなかったにもかかわらず、非常な強者としての印象が強いように思います。

 こうした印象を持ったのはおそらく、作中で語られたエピソードに起因するものと思われます。少し不遇(と思われる)キャラクターは、作中であまりエピソードが語られておらず、そうでないキャラクターは作中でそれなりにエピソードが語られるか、登場回数が多いように思います。とりわけ、メビウスなどは作中でラスボスという扱いだったために、もう少しそのキャラクターを掘り下げてもいいような気もしました。っていうか、あの仮面の中身で、ほとんど何の必然性もないっていうのはどうなのかなあ、と思いました。

 あと、メビウスよりもシズヤのほうが強キャラ感あるのもどうなの、と思います。『強さ(実力)』という観点で見ると、キャラクターの種類には二つあって、背景を語ることで強く見えるキャラクターと、背景を隠すことで強く見えるキャラクターという分類ができるかと思います。この記事に出てきた中ではハーミットなんかは前者で、ライナスティ、シズヤ、メビウスなどは後者であるかと思います。メビウスに関してはそもそも、戦っているシーンが言うほどなかった、というのも過小評価の大きな要因のような気もしますが……

 

 最終巻の感想でも触れたことですが、この物語の結末はおそらく、大多数の読者が予想しうるものでしょう。だが、それがいい(大声)。

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 こういう物語は、読者の予想を超える必要こそあれど、それを覆す必要はないようにも思います。そういう意味ではところどころに意外な展開があり、しかし大枠では当初描いた結末に着地した本作はしっかりと物語のあるべき形を踏襲した良作なのではないかな、と思います。