紙城境介『ウィッチハント・カーテンコール~超歴史的殺人事件~』
ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件 (ダッシュエックス文庫DIGITAL)
- 作者: 紙城境介,文倉十
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/05/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
今回はちょっと変わり種のミステリ紙城境介『ウィッチハント・カーテンコール~超歴史的殺人事件~』(ダッシュエックス文庫)の紹介です。
タイトルからもわかるかと思いますが、《魔女狩り》のお話です。裏表紙に《犯人は魔女。トリックは魔法》とある通り、本作は魔法が当たり前に存在する世界でのミステリとなっております。
《魔法+ミステリ》でぱっと思いつくのは米澤穂信『折れた竜骨』(創元推理文庫)ですが、本作は《魔女狩り》をメインテーマに据えているという点で差別化できているかな、と思います。
ただ、扱うテーマ上、両作品を比べてしまうのは仕方のないこととも思います。なので今回は、なるべく比べない方向で感想を書いていきたいと思います。
で、感想。
バトルシーンは要らないんじゃね?
この作品、実は発売してすぐに読んだのですが、例によって内容を程よく忘れていたので改めて読み返したのです。
で、そんな感想を抱いたのですが、びっくりなことに当時ちょろっと書いておいたメモ(一言感想みたいなやつ)にも同じ言葉が書いてありました。
ヒロインの危機の演出として、ピンチに主人公が駆けつける、というのはまあ太宰治『走れメロス』の昔から定番なわけですが(おや、その論だとセリヌンティウスがヒロインということになってしまいますな。トマト抜きがお好きな方々が喜びそうではありますけど)、この部分はもう少しやりようもあったのではないかなあ、と思います。
ただ、映像的な観点から見ると、このシーンを抜いてしまうとかなり面白みが減ってしまうようにも思います。動きが少ないというか。
ミステリ的には物理的な動きに乏しくても問題ないのかもしれませんけれど、ライトノベル的にはあまりよろしくないのかな、と思います(ダッシュエックス文庫はライトノベルレーベル)。
肝心のミステリの部分ですけど、よくできてるなと思います。
細かいことを言いだせばきりがないですが、大枠ではよかったんじゃないかと思います。こういう展開の物語は個人的に好きなので、評価甘めかもしれませんけど。
あと、帯なんですが裏表紙の《犯人は魔女。トリックは魔法》っていう煽り文を使ったらよかったんじゃないかなあ。ちなみに帯には新房昭之監督(シャフトの人。『魔法少女まどか☆マギカ』なんかが有名ですね)の推薦文が印刷されています。どっちがいいかは好みにもよると思いますが、個人的には帯の推薦文で本を選ぶことはあまりないので、魅力的な煽り文のほうが好みですね。両方印刷するわけにはいかなかったのかなあ。
ところで、本作を読んで「紙城境介ええやんけ!」となると、ちょっと悲しいことになります。というのも、著作がこれしか刊行されていないのです。悲しいことになったでしょう? 僕はなりました。二冊目を出しやすいように本作を買っても、いいのよ(チラッ、チラッ)?
割と切実に続刊(もしくは新作)求む。
《関連記事》