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メガネストの読書日記

眼鏡好きのメガネストが、読書日記をつける

トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験』

ノンフィクション 論文

 

世にも奇妙な人体実験の歴史 (文春文庫)
 

  目を疑いたくなるほどの、人体実験の数々。

 

 ということで今回は、トレヴァー・ノートン『世にも奇妙な人体実験』(文春文庫)です。

 

 ……なんでこんな本持ってるんでしょうねえ

 タイトルだけ見ると『今わの際に処分しておきたい本その一』といった風情ですね。中身もまあ、お察しなのですが……。

 しかし、この本を買った記憶がまったくないんですよねえ。いつの間にか部屋に置いてあって、出所がまったくわからないので少し怖いですが、とりあえず読んでみることにします。

 

で、感想。

……(ドン引き)

 

ド ン 引 き !

 ……いやはや。目次を読んだ時点で想像していましたが、序盤はなにか変な悟りを開きそうになる内容ですね。

 基本的な内容は、まあタイトルのとおりなんですが、基本的には研究者が『自分自身を』対象にした人体実験をすることにより、その分野が飛躍的に発展したんですよ、という内容なのですが、その実験方法がね……

 とりあえず前半七章はご飯の前後に読まないことを強くお勧めします。そういう内容ですので。

 しかしながら、そこを乗り越えると割合普通の(といってしまう時点で感覚がマヒしているのかもしれませんが(^^;))内容で、個人的には興味深く読みました。

 タイトルこそこんな感じですが、内容はいたって真面目で、科学エッセイとして十分に楽しめるものになっています。

 

 しかし、どうしてこの本は僕の部屋にあるのかなあ。不思議だ。

今日泊亜蘭『最終戦争/空族館』

SF

 

最終戦争/空族館 (ちくま文庫)
 

  伝説の復刻

 

 というわけで今回は、今日泊亜蘭『最終戦争/空族館』(ちくま文庫です。

 日本のSF黎明期を支えた、伝説の著者の一人、今日泊亜蘭の作品が復刊されていました(昨年十月ごろにされていた模様)。

 僕はなんとなく本屋をうろついていて発見したのですが、ちくま文庫での復刊は予想外でしたね。てっきり早川か創元のどちらかだと勝手に思い込んでいたので(『海王星から来た男』の復刊が、創元SF文庫でなされる、という情報を聞いていたからかもしれません。あれはいつ復刊するんでしょうねえ……)、ものの見事にスルーしていたわけですが、今回購入することができたので、読んでみた次第。

 

 で、感想なんですが、やはり古さは否めないと思います。半世紀以上も前の作品ばかりなので無理からぬことかと思いますが、しかし、それでもやはり、いい

 基本的に『空飛ぶ円盤』が出てくるあたり、当時のSF感というものを端的に表している気もしますが、技巧の鋭さと着想の面白さが、それだけに際立つようにも思います。

 本書に所収されているのは掌編か、やや長い短編程度の作品ばかりなのですが、そのほとんどが技巧的で、非常に面白く読み進めることができます。

 しかし個人的に注目したいのは、時折混じりこむそういう技巧を用いない短編のほうです。これがまたいいんですよねえ。

 特におすすめしたいのは、『カシオペヤの女』『ロボット・ロボ子の感傷』という二編で、この作品集の中ではやや異色ともいえる作品です。

 個人的にはSFというジャンルは愛という感情と非常に相性がいいと感じているので、やはりこういう作品には心動かされてしまいますね。

 

 他には、なんといっても表題作の『空族館』でしょう。

 今日泊亜蘭の未発表作品ということで期待していたのですが、これはすごくよかったと思います。SFでは割合みられる題材ではありますが、定番には定番の良さがあるということを再認識しました。

 文語体なのでそういう文章が苦手な方は少し読みにくいかもしれませんが、それでも読む価値のある作品がここにはあると思います。おすすめです。

河野裕『最良の嘘の最後のひと言』

エンタメ ミステリ ライトノベル

 

オレはある少女に会わなければならないんだ。

 

 ということで今回は、河野裕『最良の嘘の最後のひと言』(創元推理文庫です。 

 作者の河野裕といえば『サクラダリセット』シリーズ (角川文庫)《階段島》シリーズ(新潮文庫nex)で見せた、青春と非日常の融合という作風が印象的ですが、今回もその色は踏襲しつつ、よりエンタメ色を強めた、ある意味では新境地ともいえる作品でした。

 

 世界的企業《ハルウィン》が『四月一日に年俸八千万円の終身雇用で超能力者一人を採用する』という告知を出したところ、その前日の三月三一日に行われる最終試験に、七人の男女が姿を現した。

 彼らはたった一通の採用通知書をめぐり、争いを繰り広げるが――

 

 というのが、本作のざっくりとした内容になるでしょうか。

 基本的にはライトな超能力バトルものとして読んでいけばいいのですが、複雑に絡まり合った登場人物の思惑や、緻密に組まれたロジカルが物語に深みを生んでいます。

 個人的には主人公の参加の動機が少し薄いように思えたので、そのあたりをもう少し掘り下げてほしかったなー、という気はします。

 全体的にテンポが速く、息をつく間もなく物語が展開していくのは個人的に好感が持てます。しかしその反面で、主人公をはじめとしたキャラクターをもう少し深く掘り下げてもよかったようにも思います。ただそれをしてしまうと、本作の売りであるスピード感が損なわれてしまう恐れもあるため、もしかしたらこの形が最良なのかもしれません。

 僕は河野裕の他作品を読んでいませんが、とりあえずほかの作品も手に取ってみようかな、と思いました。

本上まなみ『めがね日和』

エッセイ

 

めがね日和 (集英社文庫)

めがね日和 (集英社文庫)

 

  へもいほんじょのへもい日常

 

 ということで今回は、本上まなみ『めがね日和』(集英社文庫です。

 元祖癒し系などと言われ、グラビアアイドルとして活躍した彼女ですが、エッセイストとしても素晴らしい才能を持っているのです。

 僕が本上まなみの作品に出会ったのは、彼女の短歌が最初であったように思います。どんな短歌だったかは忘れてしまいましたが、鶯まなみ名義で発表された短歌を見かけて、そのあと書店でエッセイを見かけて……という流れだったように記憶しています。

 本書『めがね日和』は、そんな風にして手に取った最初の一冊になります。それだけに思い出深く、今回のように時々読み返すのですが、いつ読んでもいいですね

 彼女のエッセイはどれも肌触りがいいというか、読んでいて落ち着くものが多いように思います。解説で森見登美彦氏も言及していますが、『大好きメンチ』というエッセイには、メンチカツを世界で一番おいしく食べられるシチュエーションの一つが、衒いのない文章で書かれていますし、文章から彼女の人柄がにじみ出ているような、そんなエッセイに仕上がっているように思います。少し寒い夜にあったかい飲み物を飲みながら読みたいような、そんな一冊だと思います。

穂村弘『蚊がいる』

エッセイ

 

蚊がいる (角川文庫)

蚊がいる (角川文庫)

 

 ふわふわ人間が感じる、周囲とのズレ

 

 というわけで今回は、穂村弘『蚊がいる』(角川文庫)です。

 穂村弘といえば、以前スターバックスを題材にしたあれなエッセイとか、ご飯に関する(関するとは言ってない)あれなエッセイなんかを取り上げましたが、今回もなかなかの仕上がりです。

 穂村弘の著作を読んでいると、恐ろしく繊細で、些細なことを気にする人だなあ、と思うのですが、エッセイがうまい人というのは、例外なくこうした些細なことを拡大するのがうまいと感じます。

 巻末にはお笑い芸人の又吉直樹氏との対談が掲載されていて、これまた面白いんですが、穂村弘の真骨頂はやはり、一人でなにかについて語っているときだなあ、と感じます。

 本書でのお薦めは『カニミソの人』、『納豆とブラジャー』、『漁師のプリン』あたりでしょうか。

 お気に入りを拾い読みするもよし、半身浴のお供にするもよし、カフェで読んでニヤニヤして、周囲に気持ち悪がられるのもよし(僕ですけど)。好き好きに、ゆるく楽しめるという意味で、エッセイはやはりいいですね。

 

《関連記事》

穂村弘『人魚猛獣伝説~スターバックスと私~』 - メガネストの読書日記

穂村弘『君がいない夜のごはん』 - メガネストの読書日記

詠坂雄二『ナウ・ローディング』

ミステリ 一般文芸

 

ナウ・ローディング (光文社文庫)

ナウ・ローディング (光文社文庫)

 

  ナウ・ローディング

 

 というわけで今回は、詠坂雄二『ナウ・ローディング』(光文社文庫)です。

 以前感想を書いた『インサート・コイン(ズ)』の続編となります。

 続編、と言いつつも世界観を引き継いでいるだけで、前作を読んでおらずとも問題なく楽しめると思います。

 本作は連作短編集となりますので、まずは個別に感想をば。

 

・『もう1ターンだけ』

 前回の後日談的なものですが、作品のスタイルとしても前作を少し引きずっているかな、という印象。

 本書は前作と比べるとミステリの色を薄めて、青春小説としての面を大きく押し出しているように思います。この作品はその過渡にあるというか、まだミステリらしい話だと思います。

 

・『悟りの書をめくっても』

 RTA(リアル・タイム・アタックの略です)のお話。

 一応ミステリの顔をしていますが、それ以上に青春小説として良質で、本書の中で一つ選ぶとしたら、僕は迷わずこれを選ぶでしょう。

 

・『本作の登場人物はすべて』

 タイトルでピンとくる方もおられるかと思いますが、R‐18感満載の話です。苦手な人は読み飛ばしを推奨。

 ただ、ラストの苦さがそこに至るまでの描写とのギャップでうまく際立っているようにも思います。万人にお勧めはできませんが、個人的にはいろいろと思うところがある作品。

 

・『すれ違う』

 ややトーンダウンしたかな、という印象の作品。

 嫌いではないのですが、最後のシーンは《よみさか》が登場しない方がよかったのではないかという気がします。青春小説としての色もやや控えめで、なんだか不思議な話。

 

・『ナウ・ローディング』

 これを読む前に『遠海事件~佐藤誠はなぜ首を切断したのか?~』 (光文社文庫)を読んでください。読まないと意味がわからない部分が多々あります。

 『遠海事件』の後日談的な話。

 タイトル的にはここに納まっていることに違和感はないのですが、内容は一個もゲームに関係ないので、この作品だけ妙に浮いている感じがします。

 創作とゲームというのは切っても切れない関係にあるので、ここに収録したかった気持ちはわかるのですが、このテーマで語るうえで過去作とリンクさせてしまったのはまずかったかなあ、と思います。内容的にはいろいろな人に読んでほしいものなのに、過去作に目を通すというハードルがあるのはちょっと……

 

 という感じ。全体的なクオリティは前作のほうが高い印象ですが、どの話にもはっとさせられる部分があり、そういうところが今回のスタイルゆえなのかな、とも思います。

 青春小説に寄せたことによって、物語が読者の近くまでやって来て、そのおかげで伝えたいことがまっすぐに伝わるというか、物語に含まれた苦みが、過ぎ去ってしまった青春時代とうまくマッチしています。

 なかでも『悟りの書をめくっても』はかなりいい出来で、色々な人に読んでほしい作品です。

竹本健治『囲碁殺人事件』

ミステリ

 

囲碁殺人事件 (講談社文庫)

囲碁殺人事件 (講談社文庫)

 

  すべての謎は、首に帰結する。

 

 というわけで今回は竹本健治囲碁殺人事件』(講談社文庫)です。

 竹本健治といえば、以前感想を書いた『涙香迷宮』が昨年末のランキングで軒並み上位に入り話題となりましたが、その原点が本作となります。

 本作は1980年代に書かれた《ゲーム三部作》の一作目で、IQ208という天才的な頭脳を誇る少年牧場智久が登場するシリーズの一作目でもあります。

 感想ですが、いいですね、これ

 僕は囲碁にまったく明るくないんですが(ルールをぼんやり知っていたくらい)、それでも十二分に楽しむことができました。作中でルールもしっかり解説されているし、僕のようなずぶの素人にもわかりやすく書かれていると思います。

 肝心の謎のほうは……正直途中で「そういうことだな」とわかってしまったのですが、結局のところ本作は小説として面白いので、そこは大した問題ではないかな、と思います(もっとも、気取られないに越したことはないわけですが……(^^;))。

 というか、今回新装版を手に取った、そこそこミステリを読んでいる人は、大方察しがついたのではないかと思います。ただ、これがおおよそ40年前の作品であるということを考えると、当時はかなり斬新だったのではないかな、と思います。

 

 併録された『チェス殺人事件』に関しては、まあおまけ程度に考えておいた方がいいでしょう。どうでもいい話ですが、この作中の智久くんはいったい何歳なんでしょうかね? 『囲碁殺人事件』のころよりも幾分大人びて見える反面、海外に行く際にお姉さんを保護者としているので、それほど時間の経過はなさそうですが……